鹿児島県立美術館
設立を考える会

設立趣旨・ご挨拶

鹿児島県立美術館
設立を考える会とは

 2019年2月15日、県内の美術団体である鹿児島県美術協会、鹿児島デザイン協会、鹿児島県書道会、鹿児島県写真協会の代表者が集い、芸術文化を通して地域の発展を図るため、県立美術館の必要性を検討する「鹿児島県立美術館設立を考える会」が発足しました。

 本会の発足以前は、県美術協会を中心に、30年以上に亘り鹿児島県に対し県立美術館設立の必要性を訴えておりましたが、残念ながら未だ進展は見られておりません。

 芸術系大学がなく、人材育成の減衰とその拠点たるべき県立美術館もない状況では美術教育の機会は低下し、全国水準に達する美術振興は望むべくもありません。

 歴史的にも、日本近代絵画の基礎を築いた黒田清輝をはじめ、町田久成(初代東京国立博物館館長)や松方幸次郎など、作家だけでなく行政官や稀代の文化人を輩出したにもかかわらず、その事績は地元の文化資源として根付いておりません。

 こうした美術文化に係る資源と認識の欠けた状況では、県民の教育的、経済的不利益は計り知れません。 鹿児島の美術資源を生かせば、全国でも稀有な特色ある美術館となり、人々の豊かな感性や想像力を育み、活発な文化交流が行われることで相乗的に観光をはじめ地域経済の活性化に大いに貢献することでしょう。

 アートは人々の感性と想像力を育むとともに、経済的潤いと豊かな地域づくりをもたらします。 本県でもすでに海外からの多くの人々が働いています。これからは老若男女一人ひとりが柔軟に受容の器を広げ、国際化に向かわねばなりません。 国際都市鹿児島の再開発の気運が高まっている今こそ、芸術文化の環境を整えることがとても重要です。 アートを通じて互いの存在を尊重し合える心豊かなふるさとを実現し、すべての県民が生まれ来る子供たちとともに芸術文化を共有できる場、県立美術館の設立こそ、今の時代の私たちの責務だと考えています。

 芸術文化拠点の美術館を核として、より質の高い本県の文化行政が推進されることで、多くの人々を鹿児鳥に呼び込むことが可能です。アートは経済の原動力たりうるのです。

 私たちは、県の文化行政の方々とともに県民の豊かな生活に資するものを美術館という形で具現化するお手伝いをしたいと願っています。

ご挨拶

会長
宮永 祥子

 皆様こんにちは
 私ども「鹿児島県立美術館設立を考える会」は2019年2月に発足し、活動4年目を迎えました。
 県都鹿児島市の再開発が活発になり始めた2019年、日本美術家連盟会員で国画会所属 東條新一郎氏が発起人(初代会長)となり、鹿児島の文化の未来を憂える美術関係者が集いました。鹿児島県美術協会・鹿児島デザイン協会・鹿児島県写真協会・鹿児島県書道会が一つとなり、これからの美術振興を学び、県都での鹿児島県立美術館設立について考えだしたのです。

  私は二度目の大学生活や学芸員資格取得後、考現学由来の街歩き会参加を軸に、ここ10年ほど国内外の美術展を年100カ所以上訪れました。続けているうちにふと思ったのは、機会がある自分はよいけれども、鹿児島の子どもたちの環境は?今後鹿児島のアートはどうなるだろう?ということが気になったのです。教育や美術振興に携わった経験から、教育機会の重要性を痛感していましたので、この会の創設にも積極的に関わりました。
 2021年、東條初代会長から「アートをもっと多面的に発信しよう」と背中を押していただき、憚りながら2代目の会長をお引き受けしました。
 以来、コロナ禍で様々な制約が生じ、ままならない時期と重なりましたが、大分県立美術館研修や子ども食堂へのクレヨン寄付、シンポジウム開催、月1回の定例委員会、アーツカウンシル会議や県文化振興課との会合を重ね、活動冊子製作やHP制作など、着実に告知や学びを深める活動を進めております。

  今、皆様に一番知っていただきたいことは、美術館の社会で果たす役割が非常に変化しているという点です。文化財を保存・研究・継承するだけではなく、美術館は人々が多く集い、多様性を学び、心の健康を育む場所へとシフトし始めています。他県では既に、美術館をクラウド、ハブとして地域の課題解決や社会的包摂へと役割を広げ、街中アート展やイベントなどが行われ、大変評価されています。美術館で価値が定まった文化を知り、それを学んだ将来の文化を担う作家達が、日々自らの美意識を研鑽しています。日常的にそれらに触れることは、作家だけでなく一般市民にとっても、本当の心豊かな生活の一助になるはずです。
 ITやAIの進化で多くの労働力がテクノロジーに置き換わろうとする今、「ヒト」が本来持っている創造力や感性、柔軟な発想力がより重要になる社会が迫っています。
 そのためにも、ぜひとも次世代のために、鹿児島県都に美術の拠点を造ることを要望いたします。

 この悲願は現在の社会情勢のもと、皆様のご理解やご協力なしには実現しません。 今後とも、本活動に一層のご理解ご協力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

令和4年 11月

顧問
島津 公保

 平成31年2月に発足した私どもの会も3年半が過ぎました。この間に県知事始め、県担当部局や経済界への要望活動を継続的に実施すると共に、2回のシンポジウムを開催し広く賛同者を得るための活動を続けて参りました。私どもの活動も少しずつですが、県民の中に浸透してきていると感じています。

 そして、時を合わせる如くに、近年、国レベルで経済界と行政が経済活性化を目的として、美術への関心を高め、美術振興に注目してきています。昨年は、東京の経済同友会が「アート産業活性化に向けたエコシステムの構築」という提言を発表しました。その後、これに応えるかのように、昨年暮れには、文化庁が文化審議会文化経済部会に「アート振興ワーキンググループ」を設置し、今年6月には、経済産業省が「アートと経済社会について考える研究会」を設置し議論が始まっています。

 これは、経済視点でのアート産業、アート振興の必要性を国が感じて、それを活性化させようと取り組み始めたと言うことではないでしょうか。今、VUCAの時代と言われるように、コロナパンデミックや、ロシアのウクライナ侵攻はじめ先行きが見えない状況が続き、これまでの効率を求める活動の限界が見えてきて、アート思考によるもっと柔軟な発想が求められる状況になってきています。

 国の議論の中では、アートは他との差別化を図り、産業競争力の源泉であるとされています。今後、AIが浸透すれば、ますます人間にしか出来ない発想力、創造力が求められます。アートは単にメセナの時代から、本業強化に必要なものとされてきています。先進国ではコロナ後の経済のブースターとして、文化芸術分野に積極投資が行われ、OECDのレポートでも、文化が雇用、ビジネス成長、消費のドライバーであると指摘しています。

 このような時代の流れを考えたときに、鹿児島もそれに併せてアート振興を図る必要があるのではないでしょうか。そのためには、ハード面、ソフト面の充実が求められますが、美術芸術の拠点となる県立の美術館はその出発点といえます。

 もし、新設の県立美術館が設立されれば、県の文化ブランド力がアップし、美術館による集客力はもちろんですが、美術館を核としたアートの学びを活かし、産業競争力強化を図り、地域の活性化につなげることが出来るものと思っています。

 鹿児島県は、今一度、この点について考える必要があると感じています。是非皆さんと一緒に、活力ある文化立県鹿児島を目指したいと思います。応援していただければ幸いです。

メンバー紹介

会長

宮永 祥子

武蔵野美術大学校友会鹿児島支部
現代美術作家
ArtWork 花祥紋 主宰

副会長

塩津 洋一

鹿児島デザイン協会 副理事長
アーツカウンシル鹿児島設立準備機構事務長
鹿児島県広告協会理事
鹿児島県景観アドバイザー
県立松陽高校美術科非常勤講師

委員

久保 満義

鹿児島県美術協会会長
日展会員

委員

村上 光明

鹿児島県写真協会会長
奄美観光大使
JPS日本写真家協会会員
鹿児島県美術協会会員

委員

上野 一範

鹿児島県書道会会長
謙慎書道会常任理事
南日本書道展委嘱作家
南日本書道会審査員
鹿児島純心学園講師

委員

池川 直

鹿児島大学教育学部教授 彫刻
日展特別会員
日本彫刻会理事
白日会常任委員

委員

東条 新一郎

日本美術家連盟会員 国画会会員
日置市美術協会会長
ARTHALL天文館画廊主宰

委員

月野 浩二

日本ペンクラブ会員
美術館漫遊ライター

委員

きはら ごう

画家
一般社団法人空間芸術TORAM 理事
合同会社GoART 代表

顧問

島津 公保

島津興業取締役相談役
鹿児島日英協会会長

事務局長

延時 秀一

鹿児島県美術協会事務局長
日本グラフィックデザイン協会会員
二科会デザイン部理事
明石屋ブランドマネジメント室